カラヤンとベルリンフィル研究ブログ

スイス・サンモリッツにあるカラヤンの別荘発見!ソニー盛田昭夫氏とのエピソードも

2025年12月2日 当サイトにはプロモーションが含まれます

カラヤンが愛した2つの別荘 ― フランスとスイスに築いた「静寂の王国」

20世紀後半、ヨーロッパの音楽界に絶対的な存在感を示した指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤン。
華やかな音楽界を表で支えた一方で、裏側には「美しい静寂」を求め続けた男の姿があった。
世界中を飛び回りながら、彼が心から安らぐことができたのは、フランスとスイスの2つの別荘だったと言われている。

ここでは、カラヤンの私生活を象徴する
① 南フランス・アンティーブの地中海の別荘
② スイス・サン・モリッツのアルプス山荘

この2つを中心に、そこでの暮らしやエピソードを詳しく紹介する。

1. 南フランス・アンティーブの別荘 ― カラヤンの「海の家」

カラヤンが地中海沿岸で選んだのは、フランス南部のアンティーブ(Antibes)
ニースとカンヌの間に位置し、ヨーロッパ随一の美しい海と温暖な気候で知られる土地だ。
ここは、カラヤンが「世界中で最も好きな場所の一つ」と語ったほどの安息地だった。

(1)明るい光と海風の別荘

アンティーブの家は、コート・ダジュール特有の白い建物で構成され、
大きなテラス、プール、海を望むリビングルームなど、地中海の光を最大限に取り入れる設計だった。
ザルツブルクの森の家とは対照的に、ここは「光」そのものに満ちた空間だったと言える。

彼はこの家で、アナログ録音の編集用テープやスコアを持ち込み、
海の音を聞きながら新しい企画を考えることも多かったという。

(2)水中カメラを使うほどの“海好き”

カラヤンは海で泳ぐことが大好きで、アンティーブでは毎日のように海に入った。
水中カメラや防水機材を用いて、泳ぐ自分を撮影させていたほどの熱の入れようだった。
晩年に撮影されたプライベート映像の中にも、アンティーブで海に入るカラヤンの姿が残っている。

(3)家族が最も長く滞在した「夏の家」

家族もアンティーブの家を特に気に入り、毎年長期間滞在した。
娘たち――イザベルとアナベル――にとっては、ここが“家族の記憶の中心”だったともいわれる。

カラヤンにとってアンティーブは、
最も開放的で明るい別荘であり、仕事と休息のバランスが取れた「理想の場所」だった。

2. スイス・サン・モリッツの山荘 ― “アルプスとスポーツ”の別荘

もうひとつの重要拠点が、スイス・エンガディン地方にあるサン・モリッツ(St. Moritz)である。
ここはヨーロッパ最高級の冬のリゾート地で、ジュリアード山脈に囲まれた静かで美しい高地にある。

(1)カラヤンのスポーツ魂が燃え上がった土地

カラヤンはスキーをこよなく愛した指揮者だった。
しかも、ただ「好き」というレベルではなく、
60代後半になっても本気で滑り続けるほどの情熱を持っていた。

サン・モリッツは、 ・雪質の良さ ・静かで広大な斜面 ・プライバシーの守られる環境 がそろっており、彼の精神を完全に開放する場所だった。

(2)山荘は“もうひとつの仕事場”でもあった

サン・モリッツの山荘には、防音されてはいないものの大きな音楽室があり、 カラヤンはここに大量のスコア、録音テープ、仕事道具を持ち込んでいた。

雪景色の中、暖炉の前でスコアを広げる姿は、 アニーフやアンティーブとはまた違う、冬のカラヤンの象徴的な姿である。

朝はスキー、午後は音楽、夜は家族と食事―― そんなメリハリのある生活が、メンタルの安定にも大きく寄与したと言われている。

(3)有名な「ポルシェで峠を攻めた」逸話

サン・モリッツ周辺は峠道が多く、 カラヤンはここで愛車ポルシェを走らせるのが大好きだった。 クラシック音楽の巨匠が、アルプスの急峻な道をスポーツカーで駆け抜けるというギャップは、 ファンの間ではあまりにも有名だ。

「音楽も車も、最高の操作性能を求める」という彼らしい一面がよく表れた場所でもある。

(4)ソニーの盛田昭夫氏を招待

このサンモリッツの別荘には1980年頃、ソニー創業者の盛田昭夫氏(故人)が招かれています。

スイスでのフォーラムに盛田氏が参加するということを聞いたカラヤンは盛田氏に連絡し、ヘリコプターを手配するので別荘に遊びに来るよう提案したそうです。盛田氏がヘリポートに到着するとカラヤンが日本製の四駆を自ら運転して別荘に向かったとのことです。

サンモリッツの別荘では肉と野菜を使った温かいポトフに舌鼓を打ったり、室内プールで遊んだり、屋外でソニー製FMトランジスタラジオを一緒に聴いたりして楽しいひと時を過ごしたようです。

カラヤンは子どもの頃から本当に機械ものが大好きだったようですね。

下の動画はサンモリッツの街の様子です。

3. 2つの別荘に共通する“カラヤンらしさ”

アンティーブとサン・モリッツという、まったく対照的な2つの別荘。
しかし、この2つには共通点がある。それは、

◆ 静寂があること ◆ 自然の力が強いこと ◆ 家族とプライベートを守れること ◆ そして、音楽の準備ができること

カラヤンは一見すると華やかな指揮者に見えるが、 内側は驚くほど「自然」と「孤独」を必要とするタイプだった。 別荘は、まさにその2つを満たすための場所だった。

4. 終わりに ― 華やかな人生を支えた“静かなる2拠点”

フランス・アンティーブとスイス・サン・モリッツ。 この2つの拠点は、カラヤンの人生を裏から支えた、 音楽家としての「根」と呼べる場所である。

地中海の光に包まれた海の家と、 アルプスの雪に抱かれた山の家。 その両方があったからこそ、 彼は年間300日近い指揮活動を続けながら、世界最高の音楽を生み出し続けることができた。

派手さとは無縁の、しかし深い静寂を持つ2つの別荘――。
そこにこそ、カラヤンという人物の本質が静かに宿っていたと言えるだろう。

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