ベルリン・フィルと日本人奏者 ― 日本人女性・男性を織り交ぜた6人の軌跡
2025年12月1日 当サイトにはプロモーションが含まれます
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(以下「ベルリン・フィル」)は、クラシック音楽界における最高峰オーケストラの一つです。その中において、日本人奏者が長年さまざまな役割で活躍してきた歴史は、単なる「参加」ではなく、オーケストラの中心やリーダーシップを担う存在へと進化してきた道のりでもあります。特に 町田琴和さん、清水直子さん、伊藤マレーネさん(女性奏者)と、安永徹さん、土屋邦雄さん、樫本大進さん(男性奏者)という6人は、それぞれの世代・役割で象徴的な存在です。
以下、それぞれの奏者の経歴、ベルリン・フィルにおける役割、そして彼らを通じて見えてくる日本人奏者の意義を掘り下げます。
このページの目次
町田琴和さん ― 第一ヴァイオリンに根を下ろす象徴
経歴
東京出身で、桐朋学園子どものための音楽教室 → 東京芸術大学付属高校・大学でヴァイオリンを学ぶ。
DAAD(ドイツ学術交流会)の奨学金を得て、ドイツ・フランクフルト音楽大学に留学。そこでエディット・パイネマンらに師事。
ドイツでの経験として、ヴュルテンベルク・フィル(ロイトリンゲン管弦楽団)でコンサートマスターを務めたことがある。
1997年9月、ベルリン・フィルの第一ヴァイオリン奏者として正式に加わる。
ベルリン・フィルでの役割・影響
町田さんは、日本人女性ヴァイオリニストとして第一ヴァイオリン・セクションに根を下ろした非常に象徴的な存在です。室内楽アンサンブル(Venus Ensemble Berlin など)への参加を通じて多彩な音楽表現を追求しています。彼女の存在は、特に若い世代の日本人音楽家にとって大きな道標です。
清水直子さん ― 首席ヴィオラ奏者としての確立
経歴
大阪出身。最初はヴァイオリンを学んでいたが、1992年にヴィオラに転向。
桐朋学園大学でヴィオラを学んだ後、ドイツ・デトモルト音楽大学へ留学。今井信子氏に師事。
国際コンクールで実績を残しており、ミュンヘン国際音楽コンクールなどで優勝経験がある。
ベルリン・フィルでの役割・影響
2001年2月、ベルリン・フィルの首席ヴィオラ奏者(Principal Viola)に就任。首席奏者としてセクションを統率し、オーケストラの音色や表現に重要な重みを与えています。ソロ活動や室内楽活動も盛んで、ベルリン・フィルにおける多様性とリーダーシップの象徴となっています。
伊藤マレーネさん ― 第2ヴァイオリン首席としてのリーダー
経歴
横浜生まれ、シドニー(オーストラリア)育ち。シドニー音楽院でヴァイオリンを学ぶ。
ドイツへ移り、リューベック音楽大学、ベルリン芸術大学で研鑽を積む。
2006~2008年、ベルリン・フィルのカラヤン・アカデミーに在籍し、指導者として安永徹さんに師事。
2011年、ベルリン・フィルに入団。
2020年3月、ベルリン・フィルの第2ヴァイオリン首席奏者(Principal 2nd Violins)に就任。
役割・影響
第2ヴァイオリン首席として、セクションのリーダーとコンサートマスターの架け橋の役割を果たす。室内楽やカルテット活動も精力的に行い、女性日本人奏者が首席ポジションを担う道を広げる存在となっている。
安永徹さん ― 歴史を動かしたコンサートマスター
経歴
福岡県出身。桐朋学園高等学校、桐朋学園大学を卒業。1975年、ベルリン芸術大学に進学しミシェル・シュヴァルベに師事。
1977年、ベルリン・フィルの第一ヴァイオリン奏者として入団。
1983年~2009年、第1コンサートマスターを務め、2009年に退団。退団時にはドイツ連邦功労勲章を受章。
役割・影響
コンサートマスターとしてオーケストラを牽引し、指揮者や弦セクションとの調整を行う。退団後もソロや室内楽で活躍し、日本人がベルリン・フィルの中心的役割を担えることを示した。
土屋邦雄さん ― 日本人初の正団員ヴィオラ奏者
経歴
ヴィオラ奏者として1959年、ベルリン・フィルに入団し、日本人として初の正団員となる。長年ヴィオラ・セクションを支え、2001年に退団。2023年に89歳で逝去。
役割・影響
戦後間もない時期に正団員として加入した先駆者。長期にわたり安定したパートを担い、後進の日本人奏者にとって道を開く礎となった。
土屋邦雄氏が2023年8月20日に逝去されました(89歳)。
ベルリンフィル黄金時代を支えた土屋氏の多大なる功績に最大の称賛をおくるとともに、心からご冥福をお祈り申し上げます。
ベルリンフィル公式サイトの記事
樫本大進さん ― 現代を牽引する若きコンサートマスター
経歴
1979年ロンドン生まれ。幼少期からヴァイオリンを学び、ジュリアード・スクール(プリ・カレッジ)に通った。
2009年にベルリン・フィルの第1コンサートマスターに就任。
役割・影響
安永徹さんからその座を継ぎ、第一ヴァイオリン・セクションを率いて現代のベルリン・フィルを牽引。若手世代の日本人奏者として、未来への強いメッセージを示している。
6人を通じて見える「日本人奏者の存在意義」
これら6人を総合的に見たとき、ベルリン・フィルにおける日本人奏者の意味は以下の通りです。
- 歴史と継承の連続性:土屋邦雄さん → 安永徹さん → 樫本大進さん、と世代を超えたバトンの継承。
- 多様性と国際性:町田琴和さん、清水直子さん、伊藤マレーネさんが重要ポジションを担い、性別・国籍を超えたリーダーシップを体現。
- 文化的架け橋:日本とドイツ(欧州)を結ぶ存在として、演奏・室内楽活動で交流に貢献。
- 次世代への影響:若手・女性奏者の成功は、未来の日本人奏者の夢を現実に近づける。
結び
ベルリン・フィルにおける日本人奏者の歴史は、単なる「外部参加」ではありません。町田琴和さん、清水直子さん、伊藤マレーネさん、安永徹さん、土屋邦雄さん、樫本大進さんの6人は、それぞれ異なる世代・役割でベルリン・フィルの中核を担ってきました。彼らの歩みは、オーケストラの国際性、多様性、リーダーシップ、歴史の継承、そして未来への展望を体現しています。これからも彼らをモデルにした日本人若手奏者が世界の舞台で飛躍することが期待されます。
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