カラヤンとベルリンフィル研究ブログ

カラヤン&ベルリンフィルのライブ 1970–1979が発売

カラヤン&ベルリンフィルのライブ 1970–1979が2025年12月に発売となります。ベルリンフィルの自主レーベルだそうです。

60年代のものも発売となり、ファンとしてはたまらない企画となりますね。

収録曲の一部だけ掲載します。

  1. Disc 1 — コンサート24 (1971年9月25日)
    ・ヴィヴァルディ:「弦楽のためのシンフォニア」 ロ短調 RV169 “聖墓にて”
    ・シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調(クリスチャン・フェラス)
    ・ストラヴィンスキー:バレエ「春の祭典」
  2. Disc 2 — コンサート25 (1972年2月19日)
    ・メンデルスゾーン:交響曲 第3番 イ短調「スコットランド」
    ・ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
    ・ラヴェル:バレエ「ダフニスとクロエ」第2組曲
  3. Disc 3 — コンサート26 (1972年12月31日)
    ・ブルックナー:交響曲 第5番 変ロ長調
  4. Disc 4 — コンサート27 (1973年9月8日)
    ・モーツァルト:交響曲 第41番 ハ長調 「ジュピター」
    ・チャイコフスキー:交響曲 第5番 ホ短調
  5. Disc 5 — コンサート28 (1974年2月17日)
    ・シューベルト:交響曲 第7番 ロ短調 「未完成」
    ・ペンデレツキ:ヴァイオリンと管弦楽のためのカプリッチョ(レオン・シュピーラー)
    ・ムソルグスキー(ラヴェル編):組曲「展覧会の絵」
  6. Disc 6 — コンサート29 (1974年9月25日)
    ・モーツァルト:ピアノ協奏曲 第23番 イ長調 K.488(ジャン=ベルナール・ポミエ)
    ・シェーンベルク:交響詩「ペレアスとメリザンド」
  7. Disc 7 — コンサート30 (1974年12月8日)
    ・バルトーク:弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽 Sz. 106
    ・ドヴォルザーク:交響曲 第9番 ホ短調 Op.95「新世界より」
  8. Disc 8 — コンサート31 (1975年4月20日)
    ・ベルク:抒情組曲からの3つの楽章(弦楽合奏版)
    ・ブルックナー:交響曲 第4番 変ホ長調 “ロマンティック”(1878/80年 第2稿)
  9. Disc 9 — コンサート32 (1975年9月25日)
    ・R. シュトラウス:23の独奏弦楽器のための「メタモルフォーゼン」
    ・R. シュトラウス:交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」
  10. Disc 10 — コンサート33 (1976年10月16日)
    ・モーツァルト:オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットと管弦楽のための協奏交響曲 変ホ長調(ソロ:カール・シュタインス、ライスター、ザイフェルト、ブラウン)
    ・シベリウス:交響曲 第5番 変ホ長調
    ・シベリウス:交響詩 “フィンランディア”
  11. Disc 11 — コンサート34 (1976年12月12日)
    ・ブルックナー:交響曲 第5番 変ロ長調
  12. Disc 12 — コンサート35 (1976年12月31日)
    ・モーツァルト:交響曲 第41番 ハ長調 「ジュピター」
    ・R. シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」 (ヴァイオリン:ミシェル・シュヴァルベ)
  13. Disc 13 — コンサート36 (1977年1月25日)
    ・ヴィンベルガー:12の独奏チェロ、木管楽器、打楽器のための「プレイズ」(ベルリン・フィル12人のチェリスト)
    ・ベルリオーズ:幻想交響曲
  14. Disc 14 — コンサート37 (1977年9月25日)
    ・テーリヒェン:ティンパニ2台独奏+声楽+室内合唱+管弦楽「蛙鼠合戦」(独奏:ヴェルナー・テーリヒェン、オスヴァルト・フォーグラー、合唱:エルンスト・ゼンフ等)
    ・ストラヴィンスキー:バレエ「春の祭典」
  15. Disc 15 — コンサート38 (1977年10月21日)
    ・ブラームス:二重協奏曲 イ短調 (ヴァイオリン:トーマス・ブランディス、チェロ:オトマール・ボルヴィツキー)
    ・ブラームス:交響曲 第2番 ニ長調
  16. Disc 16 — コンサート39 (1978年1月4日)
    ・マーラー:「大地の歌」(メゾ・ソプラノ:アグネス・バルツァ、テノール:ヘルマン・ヴィンクラー)
  17. Disc 17 — コンサート40 (1978年1月28日)
    ・シベリウス:交響曲 第4番 イ短調
    ・ベートーヴェン:交響曲 第7番 イ長調
  18. Disc 18 — コンサート41 (1979年1月4日)
    ・J.S. バッハ:ブランデンブルク協奏曲 第3番 ト長調 BWV1048(ヴァイオリン:ミシェル・シュワルベ、レオン・シュピーラー等)
    ・ベルク:管弦楽のための3つの小品 (改訂版)
    ・ドヴォルザーク:交響曲 第8番 ト長調
  19. Disc 19 — コンサート42 (1979年1月27日)
    ・ウェーベルン:弦楽のための5つの楽章
    ・シューマン:交響曲 第4番 ニ短調 (改訂版)
    ・チャイコフスキー:ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 (ピアノ:マーク・ゼルツァー)
  20. Disc 20 — コンサート43 (1979年11月25日)
    ・J.S. バッハ:ブランデンブルク協奏曲 第1番 ヘ長調 BWV1046(チェンバロ:ヘルベルト・フォン・カラヤン)
    ・ベートーヴェン:交響曲 第3番 変ホ長調 「英雄」

1970年代のベルリン・フィルと言えば、もう完全に“カラヤン帝国”の黄金期。戦後復興を経て、ベルリンという街自体が再び文化の中心として存在感を取り戻していく中、その象徴として君臨していたのがヘルベルト・フォン・カラヤンとベルリン・フィルだった。

で、この1970-1979年のライブ録音というのは、単なる記録じゃなくて、カラヤンという指揮者が脂が乗り切っていた時代の、まさに生きた証人みたいな存在。よく「スタジオ録音は完璧、ライブは熱気」みたいに言われるけど、70年代のこのライブは“完璧 × 熱気”が同居してて、ある意味ズルいレベル。演奏としては洗練されてるのに、ライブ特有の緊張や勢いが乗ってくるから、とにかく力強い。

カラヤンって、人によっては冷たい、整いすぎて無機質なんて批判もある。でも70年代のライブはそこを覆してくる。情熱はあるし、演奏は攻めてるし、オケも「俺たちここまで磨かれてるけど、まだ行けるぞ」みたいなテンションがある。ベルリン・フィル全体が、職人集団の集大成を毎回本番で叩きつけてる感じ。

当時のラインナップを見ると、やっぱりカラヤンの十八番が多い。ベートーヴェン、ブラームス、チャイコフスキー、マーラー、リヒャルト・シュトラウスといった重厚なレパートリー。スタジオ録音も名盤が山ほどあるけど、この時代のライブは生のバランスやダイナミクスがすごくて、例えばベートーヴェンなんかだと、録音と比べてメリハリがゴリッと生々しくなる。その一撃が気持ちいい。

ここで面白いのは、1970年代がクラシック界で映像技術の進化期だったこと。カラヤンは映像にも異常なこだわりがあって、照明やカメラの演出まで指揮者が介入するという“現代の当たり前”を先取りしてた。ステージ演出を練り上げ、視覚的にも印象的な映像作品を残した。後年のドキュメンタリーで語られるように、彼は自分の指揮と音楽を理想の形で残したかったのだろう。

それに、ベルリンという都市自体も当時は分断の象徴で、西ベルリンで演奏活動を続けること自体が文化的なメッセージを帯びていた。冷戦の緊張感の中で世界級のオーケストラが最高峰の演奏を続ける。観客はただ音楽を聴くのではなく、「西ベルリンという場所にいる」という感覚も同時に持っていたはず。そう考えると、音楽に宿るエネルギーが強くなる理由も見えてくる。

特に1977-1979年あたりは、ベルリン・フィルのアンサンブル精度が本当に化け物クラス。弦楽の厚み、アタックの鋭さ、ブラスの突き抜ける力。評論家が「世界最高の統制」と評したのも納得のレベルで、聴くとまるでF1にNOSを積んだような加速感を覚える。

もちろん変化もある。70年代後半になるとカラヤンは自身の音楽の方向性を、初期の攻めからより柔らかく、流線的な美へと向けていった。ベルリン・フィルもそれに応じて表現を変え、包み込むようなサウンドを作り出していく。その順応力と表現の幅が、このコンビネーションを特別なものにした。

とはいえ、すべてが順風満帆だったわけではない。カラヤンの絶対的な指揮体制に対する反発や内部の緊張も確かにあった。けれど、その緊張は演奏に独特のスリルを与え、音に生々しさを加えていることも事実だ。芸術の背後にはいつも人間のドラマがある。

総じて、1970?1979年のベルリン・フィルは、歴史的に見ても極めて高い完成度と影響力を同時に備えていた時期で、その中心人物がカラヤンだった。完璧主義と大胆さ、緻密な統制とライブの即興的な魔法が混ざり合い、結果としていま聴いても古びない輝きを放つ記録が残された。

まだこの時代のライブを聴いたことがなければ、ぜひ手に取ってほしい。音の奥にあるのは、クラシック界の一つの頂点を切り取った生のドラマだ。聴き終えたとき、「ああ、本当にこんな時代があったんだ」と少し胸が熱くなる瞬間があるはず。

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