カラヤン&ベルリン・フィル 1970年代ライヴ集20SACDを紹介

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ヘルベルト・フォン・カラヤンとベルリン・フィルによる1970年代のライヴ録音を集成した、『ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団/ヘルベルト・フォン・カラヤン放送録音集成 第2集~ライヴ・イン・ベルリン 1970~1979』が、2026年2月20日に発売されました。

ベルリン・フィルの自主レーベル「Berliner Philharmoniker Recordings」から発売された20枚組の大型ボックスです。

収録されているのは、RIAS(アメリカ占領地区放送局)およびSFB(自由ベルリン放送)が1970年代に収録した放送音源。オリジナルのアナログ音源からデジタル・リマスターされ、20枚のHybrid SACD/CDにまとめられています。

このセットの大きな魅力は、カラヤンとベルリン・フィルの「スタジオ録音とは違う顔」をまとめて聴けることです。

カラヤンの1970年代といえば、ドイツ・グラモフォンやEMIに数多くの名盤を残した時期ですが、本セットでは実際のコンサートを通して、当時のベルリン・フィルの演奏を聴くことができます。

カラヤンとベルリン・フィル、1970年代のライヴを20枚に集成

カラヤンとベルリン・フィルの1970年代は、このコンビが最も充実していた時代のひとつです。

ベートーヴェン、ブラームス、ブルックナー、チャイコフスキー、R・シュトラウスといった得意レパートリーはもちろん、シベリウス、バルトーク、ベルク、シェーンベルク、ストラヴィンスキーなど、かなり幅広い作品が収められています。

しかも、単に有名曲を集めた編集盤ではなく、当時のコンサートを基本的にそのまま収録しているのがポイントです。

そのため、カラヤンが一夜の演奏会をどのように構成していたのかも分かります。

スタジオ録音で聴き慣れた作品でも、ライヴになるとテンポ感、オーケストラの勢い、強弱の振幅などに違いがあり、聴き比べる楽しみがあります。

主な収録内容

  1. Disc 1 — 1971年9月25日
    ・ヴィヴァルディ:弦楽のためのシンフォニア ロ短調 RV169「聖墓にて」
    ・シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調(クリスチャン・フェラス)
    ・ストラヴィンスキー:バレエ「春の祭典」
  2. Disc 2 — 1972年2月19日
    ・メンデルスゾーン:交響曲第3番 イ短調「スコットランド」
    ・ドビュッシー:「牧神の午後への前奏曲」
    ・ラヴェル:「ダフニスとクロエ」第2組曲
  3. Disc 3 — 1972年12月31日
    ・ブルックナー:交響曲第5番 変ロ長調
  4. Disc 4 — 1973年9月8日
    ・モーツァルト:交響曲第41番 ハ長調「ジュピター」
    ・チャイコフスキー:交響曲第5番 ホ短調
  5. Disc 5 — 1974年2月17日
    ・シューベルト:交響曲 ロ短調「未完成」
    ・ペンデレツキ:ヴァイオリンと管弦楽のためのカプリッチョ(レオン・シュピーラー)
    ・ムソルグスキー(ラヴェル編):組曲「展覧会の絵」
  6. Disc 6 — 1974年9月25日
    ・モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番 イ長調 K.488(ジャン=ベルナール・ポミエ)
    ・シェーンベルク:交響詩「ペレアスとメリザンド」
  7. Disc 7 — 1974年12月8日
    ・バルトーク:弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽
    ・ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調「新世界より」
  8. Disc 8 — 1975年4月20日
    ・ベルク:「抒情組曲」からの3つの楽章(弦楽合奏版)
    ・ブルックナー:交響曲第4番 変ホ長調「ロマンティック」
  9. Disc 9 — 1975年9月25日
    ・R・シュトラウス:23の独奏弦楽器のための「メタモルフォーゼン」
    ・R・シュトラウス:交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」
  10. Disc 10 — 1976年10月16日
    ・モーツァルト:4つの管楽器のための協奏交響曲 変ホ長調 K.297b
    ・シベリウス:交響曲第5番 変ホ長調
    ・シベリウス:交響詩「フィンランディア」
  11. Disc 11 — 1976年12月12日
    ・ブルックナー:交響曲第5番 変ロ長調
  12. Disc 12 — 1976年12月31日
    ・モーツァルト:交響曲第41番 ハ長調「ジュピター」
    ・R・シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」(ヴァイオリン:ミシェル・シュヴァルベ)
  13. Disc 13 — 1977年1月25日
    ・ヴィンベルガー:「プレイズ」(ベルリン・フィル12人のチェリストほか)
    ・ベルリオーズ:幻想交響曲
  14. Disc 14 — 1977年9月25日
    ・テーリヒェン:「蛙鼠合戦」
    ・ストラヴィンスキー:バレエ「春の祭典」
  15. Disc 15 — 1977年10月21日
    ・ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 イ短調
    ・ブラームス:交響曲第2番 ニ長調
  16. Disc 16 — 1978年1月4日
    ・マーラー:「大地の歌」(アグネス・バルツァ、ヘルマン・ヴィンクラー)
  17. Disc 17 — 1978年1月28日
    ・シベリウス:交響曲第4番 イ短調
    ・ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調
  18. Disc 18 — 1979年1月4日
    ・J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲第3番 ト長調 BWV1048
    ・ベルク:管弦楽のための3つの小品
    ・ドヴォルザーク:交響曲第8番 ト長調
  19. Disc 19 — 1979年1月27日
    ・ウェーベルン:弦楽のための5つの楽章
    ・シューマン:交響曲第4番 ニ短調
    ・チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調(マーク・ゼルツァー)
  20. Disc 20 — 1979年11月25日
    ・J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲第1番 ヘ長調 BWV1046
    ・ベートーヴェン:交響曲第3番 変ホ長調「英雄」

スタジオ録音とは違う1970年代のカラヤン

1970年代のカラヤンは、録音という点ではまさに絶頂期でした。

ベルリン・フィルとの間にはすでに長年の共同作業があり、カラヤンが求める音色やフレージングを、オーケストラ側も深く理解していた時代です。

弦楽器の厚み、低弦の力、木管の色彩、そして金管の圧倒的な存在感。いわゆる「カラヤン=ベルリン・フィル」のサウンドが最も分かりやすく現れていた時期といってよいでしょう。

ただし、このボックスの面白さは、完成度の高いスタジオ録音をもう一度聴くことではありません。

実際の演奏会ではカラヤンとベルリン・フィルがどんな演奏をしていたのか。

そこをまとめて確認できることに価値があります。

ブルックナー第5番が2種類入っているのも面白い

個人的に興味深いのが、ブルックナーの交響曲第5番が2種類収録されていることです。

Disc 3は1972年12月31日、Disc 11は1976年12月12日の演奏。

同じカラヤンとベルリン・フィルでも、約4年の間隔があります。同じ作品をどのように変化させていったのか、聴き比べるだけでもかなり楽しめそうです。

特に1976年12月の演奏は、カラヤンがベルリン・フィルとドイツ・グラモフォンにブルックナー第5番を録音した時期と極めて近く、スタジオ盤との比較という意味でも興味深い演奏です。

「春の祭典」も2種類収録

ストラヴィンスキーの「春の祭典」も、1971年と1977年の2種類が収録されています。

カラヤンの「春の祭典」といえば、その独特な音響美で知られる作品ですが、ライヴではスタジオ録音とはまた違った緊張感があります。

6年間の違いを聴き比べられるのも、このような年代別の大型ボックスならではでしょう。

ベルリン・フィルの名奏者たちにも注目

このセットでは、カラヤンだけでなく当時のベルリン・フィルの名奏者たちにも注目です。

コンサートマスターを務めたミシェル・シュヴァルベ、レオン・シュピーラー、トーマス・ブランディスをはじめ、クラリネットのカール・ライスターなど、当時のベルリン・フィルを支えた奏者たちが登場します。

ブラームスの二重協奏曲ではトーマス・ブランディスと首席チェロ奏者オトマール・ボルヴィツキーが独奏を担当。

「ベルリン・フィルという巨大なオーケストラをカラヤンが率いる」というだけでなく、そこに所属していた名手たちの演奏を聴ける資料としても価値のあるセットです。

音源はRIASとSFBの放送録音

今回収録された音源は、RIAS(Rundfunk im amerikanischen Sektor)とSFB(Sender Freies Berlin)が収録した放送録音です。

ベルリンは当時、東西冷戦の最前線にありました。ベルリン・フィルの本拠地であるフィルハーモニーも西ベルリンに位置しています。

そうした時代に演奏され、放送用として残された音源が、半世紀近い時間を経て公式にまとめられたこと自体が興味深いところです。

しかも今回はアナログのオリジナル音源から改めてデジタル・リマスターされています。

20枚すべてHybrid SACD/CD仕様

ボックスは20枚組で、すべてHybrid SACD/CD仕様です。

SACDプレーヤーではSACD層を、一般的なCDプレーヤーではCD層を再生できます。

さらに116ページのハードカバー仕様のブックレットが付属し、エッセイや写真なども収録されています。

単なる廉価盤ボックスというより、ベルリン・フィル自身が自分たちの歴史をまとめたアーカイヴ作品という性格が強い商品です。

カラヤンの1970年代を知るには非常に面白いセット

カラヤンには膨大なスタジオ録音が残されています。

そのため、これまでも1970年代のカラヤンを聴こうと思えば困ることはありませんでした。

しかし、スタジオ録音と実際の演奏会はやはり別物です。

録音セッションでは作り直すことのできる部分も、本番では一度きり。その中でベルリン・フィルがどこまで精度を保ち、どこまで演奏を燃焼させるのか。

そこにライヴ録音を聴く面白さがあります。

私自身、カラヤンの魅力は単に「音が美しい」「演奏が完璧」というだけではないと思っています。

巨大なオーケストラを動かしながら、曲全体を一つの大きな流れとして組み上げていく力。そしてベルリン・フィルの能力を最大限に引き出したときに生まれる圧倒的な響き。

1970年代は、その魅力を最も分かりやすく味わえる時代のひとつでしょう。

カラヤン&ベルリン・フィルの1970年代は、スタジオ録音・ライヴ録音ともに黄金期といえる時代です。 この時期の音源はCDやSACDだけでなく、LPレコードでも数多く発売されました。

ご自宅に古いカラヤンのLP盤、ドイツ・グラモフォン盤、帯付き日本盤、箱入り全集などが残っている場合は、処分する前に状態を確認しておくことをおすすめします。 売る前に確認しておきたいポイントは、 カラヤンのレコード買取ガイド でまとめています。

まとめ

『カラヤン&ベルリン・フィル/ライヴ・イン・ベルリン 1970~1979』は、単なる未発表音源集というより、1970年代のカラヤンとベルリン・フィルをコンサート単位でたどることのできる記録です。

20枚という大ボリュームですが、ブルックナー第5番や「春の祭典」のように年代違いで聴き比べられる作品もあり、長く楽しめる内容になっています。

カラヤンのスタジオ録音をすでに何枚も持っている人ほど、むしろ面白さを感じるセットかもしれません。

HMVで「カラヤン&ベルリン・フィル/ライヴ・イン・ベルリン 1970~1979」を確認する

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